−鳩の心・人の心−
江柄勝雄
中学３年の時に鳩を飼い初めてもう57年にもなりました。その間の
思い出をいくつか書いてみたいと思います。
長寿日本一：鳩の寿命は普通10年位ですが，私の鳩は23年８か月
も生き，87年度のギネスブック日本語版に載りました。晩年は白内障
になりましたが，小部屋の中の餌と水の場所を覚え，自分で食べて
長生きすることができました。
盲目の鳩：数年前１羽の雛が病気になり，失明してしまいました。
親が餌を与えるは生後１か月だけですから，その後は私が毎日朝晩
小麦粉の小さな団子を作って口に入れてやりました。ところがある日
首を振ってどうしても食べないのです。そこで，餌と水を小部屋の中
に入れてみたら自分で食べたのです。首を振ったのは自立の意思表
示だったのでしょう。
太りすぎ：夕方の餌をやる時１羽の雌鳩が太っているように見えま
したので掴んでみました。確かに太っていたので「あんた少し太りす
ぎじゃないの」と話したら，止まり木に上がったきり餌を食べに下りて
きませんでした。冗談だよ，冗談だよと言ったのですが，これは通じ
なくて，その晩はまったく食べませんでした。
ボスの威信：夕方の餌をやる時は蛍光灯を点け，食べ終わって皆
んなが自分の止まり木に上がったら暗くします。ところがある晩１羽
の鳩がどうしても上がって行きませんでした。そしたらボスが下りてき
て「早く寝なさい」と一喝。これで私は家に戻って晩酌を楽しむことが
できました。ボスは私の晩酌を知っていたのでしょう。
兄弟：鳩は卵を２個産みます。子育ては１か月で，巣立った２羽の
兄弟はその後の１か月，寝食を共にします。ところで，昨年私は鳩の
先輩から１羽の鳩をもらったのですが，１羽では寂しいのでしょう，
似たような雛をみつけて兄弟になりすましました。写真は３羽で日向
ぼく，お兄ちゃんになりすましちゃったの！
ぼっこをしているところです。左の２羽が元々の兄弟で，新入りを少し
ばかり迷惑に思っているようにもみえます。でも，鳩だって人間と同じ
ように，ひとりで生きていくのは大変だし寂しいと思っているらしく，こ
の３羽の鳩もお互いに許し合っているのでしょう。
犬や猫を飼っている方は，ペットと飼い主の心が通い合っていると
信じていると思いますが，鳩も同じですし，更に全ての生き物はお互
いに何らかの交流をしているのではないかと，私は考えております。
松籟 No.40(2011) P.61-62 上越市老人クラブ連合会発行